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2026.09.07 制作の実務

WordPressを10本作った制作者が、新規制作で使わなくなった理由

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WordPressを10本作った制作者が、新規制作で使わなくなった理由

うちはWordPressでサイトを10本作ってきました。飲食店、まちづくり会社、コワーキングスペース、農園のオンラインショップ、英語サイト。テーマはすべてAstra、ページの組み立てはElementorです。

掲載許可済みの制作実績3件
掲載許可済みの制作実績3件

いまも保守は続けています。動いているサイトを止める理由はありません。

ただ、新しく作るサイトではWordPressを使わなくなりました

「WordPressが悪い」という話ではまったくありません。10本作れるくらいには、良いものだと思っています。それでも使わなくなった理由が、2つあります。

理由1:保守を止められない

WordPressは、本体・テーマ・プラグインの更新を止められません。

止めるとどうなるか。表示が崩れます。管理画面に入れなくなることもあります。そして何より、古いまま放置されたサイトは狙われます

これは大げさな話ではなくて、更新の通知は毎月のように届きます。うちが保守しているWordPressサイトでも、月に何度も来ます。

つまりWordPressで作るということは、そのサイトが存在する限り、ずっと誰かが面倒を見続ける前提で作るということです。

うちの保守は月額7,700円からですが、WordPressの場合これは「入れるかどうか選べる費用」ではありません。入れないという選択肢がない費用です。

気になっていたのは、金額ではありません。その費用の使い道です。

小さなお店のホームページで、年間9万円強。それが更新作業と、壊れていないかの確認だけで消えていく。そのあいだ、サイトの中身は公開したときのまま何年も変わりません。

同じ9万円を払うなら、サイトを良くしていくことに使いたい。そう思うようになりました。

理由2:どうやっても速くならない

もうひとつは速度です。

静的なHTMLで作ったサイトだと、Lighthouseのスコアは94〜100点が普通に出ます。うちで作った静的サイトは、全ページこの範囲に収まっています。

WordPressだと、同じ設計をしても、なかなかここまで届きません。理由ははっきりしています。

  • テーマとプラグインのCSSとJSが読み込まれる
  • ページを表示するたびにデータベースへ問い合わせが走る
  • 使っていない機能のコードも一緒に載る

キャッシュのプラグインを入れれば改善します。ただ、キャッシュはプラグインをもう1つ増やすということでもあります。理由1に戻ってしまう。

正直に書くと、速度だけで言えば「困るほど遅い」わけではありません。月に数百人が見るお店のサイトで、0.5秒速くなって売上が変わるかというと、たぶん変わらない。

ただ、軽くできるのにしない理由もないと思うようになりました。

よく言われる「WordPressの方がいい理由」を、3つとも疑ってみる

WordPressの方がいい案件は、はっきりあります。ただ、よく言われる理由の多くは、うちの実感と合いません。先にそこから書きます。

「更新するならWordPress」は、半分だけ正しいです。 記事やお知らせを書くだけなら、静的サイトでもCMSを繋げば同じことができます。このブログがまさにそうです。管理画面から書いて、公開ボタンを押すだけ。違いは記事を書くことではなく、レイアウトごと自分で組み替えられるかどうかです。そして、ここに大きな思い違いがありました。次の項に書きます。

「ECならWordPress」も違います。 うちのオンラインショップは、静的HTML+PHPにSquareを繋いで作っています。WooCommerceは使っていません。商品点数が少なくて、在庫と価格をSquare側で管理するなら、この方が軽くて壊れにくい。

「多言語ならWordPress」も違います。 ページ数が限られているなら、英語版のページを別に作るだけで済みます。WordPressの多言語プラグインは、むしろ重くて設定が複雑です。

そもそも、お客様は自分でレイアウトを変えません

これは10本作ってみて、いちばん実感が変わったところです。

制作会社はどこも「お客様ご自身で更新できます」を売りにします。うちもそう説明してきました。

ところが実際は、レイアウトを自分で変えたお客様は、10本のうち1件もありませんでした。

「並び順を入れ替えたい」と言われたことがない、という話ではありません。そもそも「自分で変えられる」ということ自体が、あまり伝わっていないという感触です。サイトは作ってもらうもので、直したいところがあれば連絡する。それが自然な感覚なのだと思います。

そして更新も、たいてい制作側に任せきりになります。「更新は自分たちでやります」と言われて管理画面をお渡ししても、1年経って記事がゼロということは普通に起こります。

言われたことと、実際に起きることは違う。 ここを織り込んでおかないと、使われない機能のために重い構成を選ぶことになります。

うちの経験で、確実に言えること

正直に書きます。うちの経験で確実に言えるのは2つだけです。

オンラインショップで、会員機能や複雑な在庫管理が必要な場合。 うちの農園のオンラインショップはWooCommerceで作りました。ログインして会員だけに見せる、商品ごとに細かい在庫の出し入れをする。このあたりはプラグインの蓄積が効く領域です。自前で書くと時間もお金もかかりますし、書いた後の保守も重くなります。

すでにWordPressで動いていて、作り直す予算がない場合。 これがいちばん現実的です。動いているものを壊す理由はありません。うちも10本の保守を続けています。

この2つに当てはまるなら、WordPressに強い会社に頼んだほうがいいです。うちは既存サイトの保守は続けていますが、新規でWordPressを組む案件はお受けしていません。

逆に言うと、予約システムや会員サイトのような込み入ったものは、うちには実績がありません。そこを求められている場合も、別の会社を探された方がいいと思います。

なお、引き継ぎやすさについてもよく聞かれます。WordPressは触れる人が多いのは事実です。ただ、静的サイトもHTMLとCSSなので、触れる人はもっと多い。引き継ぎにくいのは独自に書いたPHPの部分だけです。だからうちは、PHPを薄く書いて、テンプレートを1枚にまとめるようにしています。

うちがいま作っている形

構成の比較
構成の比較

新規制作は、静的なHTMLとPHP、そしてmicroCMSという構成にしています。

見た目の部分はHTMLとCSSで作ります。 データベースを使わないので、表示が速い。壊れる部分が少ない。

お知らせとブログだけ、microCMSに繋ぎます。 お客様は管理画面から記事を書けます。ここはWordPressと同じ感覚で使えます。

フォームや決済はPHPで書きます。 必要な機能だけを書くので、使っていないコードが載りません。

この形にしてから変わったことが、2つあります。

  • Lighthouseが全ページ94〜100点で安定した
  • 「更新を止めたら乗っ取られる」という種類のリスクが消えた

誤解されやすいので、はっきり書いておきます

こう書くと「では保守は要らないのでは」と思われるかもしれません。そこは違います。

なくなったのは「WordPress本体とプラグインを更新し続ける仕事」です。保守そのものではありません。

静的なサイトでも、放っておくと止まります。実際に起こることを挙げます。

サーバーのPHPバージョンが上がったとき。 レンタルサーバーは古いPHPを順次終了します。フォームの送信や決済、CMSからの記事取得はPHPで動いているので、ある日突然エラーになることがあります。事前に告知は来ますが、対応しないと止まります。

外部サービスの仕様が変わったとき。 Instagramの表示に使うトークンは60日で失効します。自動で更新する仕組みを入れていても、認証の方式そのものが変わることがあります。CMSや決済も同じです。

証明書やドメインの期限。 SSL証明書が切れると「安全ではありません」と警告が出ます。ドメインが切れればサイトごと消えます。

ブラウザが更新されたとき。 数年に一度、CSSの解釈が変わって表示が崩れることがあります。

つまりサイトが止まる原因が、自分の中から外に移っただけです。放置していい、という話ではありません。

それでも、保守の中身は変わりました

WordPressの保守は、時間の多くが更新作業に使われます。本体が上がり、プラグインが上がり、それで壊れていないかを確認する。攻撃されないための、守りの仕事です。

静的な構成にすると、そこが要らなくなります。空いた時間を何に使うか。うちはこうしています。

  • アクセスの数字を見て、どのページが読まれていないかを報告する
  • 季節や状況に合わせて、文章と写真を差し替える提案をする
  • 表示速度とフォームの動作を定期的に確認する
  • 外部サービスの変更を先回りして対応する

「壊れないように見張る」から「良くしていく」に、中身が移ります。 同じ月額でも、返ってくるものが変わります。

正直に言うと、ここが静的にした一番の理由かもしれません。更新作業に追われている限り、お客様のサイトは公開したときのまま何年も変わりません。

お客様にとって何が変わるか

技術の話をしてきましたが、お客様から見て変わるのはこの2点です。

1つめは、放置したときの被害が違うこと。

WordPressは、保守を止めると乗っ取りのリスクが上がります。静的なサイトは、止まることはあっても乗っ取られて別のページに書き換えられることはありません。もしうちとのお付き合いが終わっても、そこだけは安心していただけます。

2つめは、更新できる範囲が決まること。

お知らせとブログは自由に書けますが、トップページの構成を自分で組み替えることはできません。

ただ、さきほど書いたとおり、そこを実際に触ったお客様は10本のうち1件もありませんでした。「できるけれど使わない機能」のために構成を重くするより、使う部分だけ確実に動く方がいいというのが、いまの判断です。

迷ったときに聞いていること

最後に、判断の順番を書いておきます。うちが打ち合わせで最初に聞くのは、これです。

誰が、どれくらいの頻度で、何を更新しますか。

そして、答えをそのまま受け取らないようにしています。「自分たちで更新します」という言葉は、たいていそうしたいという希望であって、予定ではありません。

なので、こう聞き直します。

「いまお使いのSNSやブログを、月に何回更新していますか」

ここで返ってくる数字が、実際に起こることに近い。ゼロなら、更新機能をどれだけ付けても使われません。その前提で構成を決めた方が、あとで困りません。

ホームページは、作って終わりではありません。そのあと何年も動かしていくものです。だから「作りやすさ」ではなく「動かしやすさ」で選ぶ。16本作って、いちばん強くそう思うようになりました。

更新の話から一緒に整理できますので、迷っている段階でもお気軽にご相談ください。