※本記事にはアフィリエイトリンクを含みます。
1契約に9サイトがぶら下がっている図と、名義を分けた図の対比
制作したサイトのドメインを、順番にDNSで引いてみました。
(お客様のサイトなのでドメインは伏せます)
site-1 85.131.197.4
site-2 85.131.197.4
site-3 85.131.197.4
site-4 85.131.197.4
…
site-9 85.131.197.4
9本、全部同じIPアドレスでした。当たり前です。私が契約しているサーバー1つに、全部載せているのですから。
自社のサイトも、お客様のサイトも、同じ1契約の中に並んでいます。契約者名は私、支払いは私のカード。お客様はサーバーの管理画面を見たことすらありません。
こう書くと問題があるように見えますよね。実際あります。ただ、こうなった経緯にも理由があって、たぶん同じ形になっている制作者は少なくないと思います。
自分の状態を棚卸ししたので、正直に書きます。
なぜこうなるのか
悪意でこうなったわけではないんです。順を追うとこうなります。
ホームページを作ってほしい、と依頼が来ます。地方の小さな事業者さんです。
「サーバーはどうしましょう」と聞くと、まずサーバーが何なのかから説明することになります。レンタルサーバーとドメインが別物であること、年間いくらかかること、クレジットカードで自動更新になること。
説明したうえで「では契約をお願いします」と言うと、たいてい止まります。申し込みフォームで手が止まって、電話が来る。それも当然で、その方の仕事はホームページを契約することではありません。
そこで、こちらが言うわけです。「うちのサーバーに載せておきますね」と。
親切なんです。 その場では確実に喜ばれます。お客様は1円も余計に払わず、何の手続きもせずにサイトが公開される。私も説明の時間が省ける。
これを何回か繰り返すと、9本になります。
何が起きるか
問題は、うまくいっている間は何も起きないことです。壊れるときに、まとめて壊れます。
1. 支払いが1つ止まると、9本が同時に落ちる
私のカードが期限切れになる。更新の通知メールを見落とす。それだけで、お客様9件のサイトが同時に消えます。
1本ずつ契約が分かれていれば、事故も1本ずつです。集約するというのは、事故も集約するということでした。
2. 私と連絡が取れなくなったら、誰も触れない
これがいちばん重いです。
お客様はサーバーの管理画面のIDを持っていません。契約者は私なので、サーバー会社に問い合わせても本人確認が通りません。ドメインの更新も私のところに通知が来ます。
私が事故に遭ったり、病気で長く動けなくなったりしたら、お客様のホームページは触れないまま、いずれ期限切れで消えます。データを取り出すこともできません。
そう簡単にどうにかなるつもりはありません。ただ、「そうならない前提」で人のサイトを預かるのは、設計としておかしいと思いました。
3. 別の制作者に引き継げない
お客様が「他の会社にお願いしたい」となったとき。あるいは私が廃業するとき。
サーバーごと渡すことはできません。他のお客様のサイトも同じ契約の中にいるからです。データを抜いて、新しいサーバーに移して、ドメインの向き先を変えて、という作業が必要になります。
これは、お客様が別の会社に移る自由を、実質的に縛っているのと同じです。囲い込むつもりはまったくなかったのに、結果として囲い込んでいた。
4. 1本の重さが、全部に伝わる
共有サーバーの1契約に9本なので、リソースは共有です。どこか1本にアクセスが集中したり、重いプラグインが暴れたりすると、他の8本まで遅くなります。
いまのところ実害は出ていませんが、これも構造としては同じ話です。
じゃあ、全部お客様名義にすればいいのか
ここまで書くと「サーバーはお客様の名義で契約してもらえばいい」という結論になりそうですが、私はそうしていません。
理由を正直に書きます。そのほうが、お客様にとって楽だからです。
サーバーをお客様名義にすると、こういうものが全部お客様のところに届くようになります。
- 毎年の更新のお知らせ
- クレジットカードの期限が切れたという通知
- サーバー会社からのメンテナンスや障害の連絡
- 容量が足りなくなったとき、プランを上げませんかという案内
英語混じりのメールが年に何通も届いて、そのたびに「これは何ですか」と連絡が来ます。それも当然で、その方の仕事はホームページを管理することではありません。
「こちらで持っておきますね」と言ったときに、ほっとした顔をされたことが何度もありました。それを見て続けてきたやり方なので、簡単に「間違いでした」とは言えないんです。
なのでいまも、お客様から特に指定がなければ私の名義で契約しています。これが現在の私の判断です。
ただ、これは「リスクを知らない」のとは違うつもりでいます。上に書いた4つは、消えていません。
それでも、放っておけないこと
4つのうち、いちばん重いのは2つめでした。私と連絡が取れなくなったら、誰も触れない。
これは、名義を変えなくても手が打てます。紙を1枚作っておくことです。
- どのサイトが、どのサーバーの、どこに入っているか
- 何のIDとパスワードが必要か
- ドメインはどこで取っていて、いつ更新が来るか
- 私が動けないとき、誰に連絡すればいいか
これを家族の分かるところに置いて、できれば信頼できる同業の方にも渡しておく。それだけで「気づいたら消えていた」は防げます。
名義がこちらであっても、お客様の手元に「自分のサイトがどこにあるか」の1枚があるだけでも違うと思います。
正直に言うと、いちばん後回しにしてきたことです。作っても誰も読まないし、1円にもなりません。でも、それが無いままお客様のサイトを9本預かっているのは、預かっていると言えるのかという話でして。
サブドメインで貸す形もある
もうひとつ、うちには自社ドメインのサブドメインで公開しているサイトが1つあります。
この場合は、はっきり「うちの場所を貸している」という形です。短期のサイトや、まずは小さく始めたいという場合には、これも選択肢になります。
大事なのは、どの形なのかをお客様が知っていることだと思っています。「なんとなく制作会社が持っている」がいちばん危ない。
なお、うちが使っているのはエックスサーバーです。2018年から使っていて、他社を使ったことがないので比較はできません。もしこれからご自分で契約されるなら、私が中身を分かっていて案内できるのはここだけ、という理由でお伝えしておきます。
まとめ
- 制作者名義の1契約にまとめると、事故も1か所に集まる
- 支払い1つ、連絡1つが止まると、全部が同時に止まる
- ただしお客様名義が常に正解とも限らない。通知も判断も全部その方に行く
- うちは指定がなければ制作者名義で持っている。そのほうがお客様が楽だから
- 名義がどちらであっても、「自分が動けなくなったとき用の1枚」は要る
- いちばん危ないのは、どちらの形なのかお客様が知らないこと
サイトを作るところまでが仕事だと思っていましたが、自分がいなくなっても続くようにしておくところまでが仕事なのだろうな、と最近は思っています。
